井茂圭洞先生 文化勲章受章 記念祝賀会

令和6年3月24日、井茂圭洞先生の文化勲章受章記念祝賀会が開催されました。会場となった神戸ポートピアホテル大輪田の間には書道界だけでなく、各界を代表する方々が全国から馳せ参じ、1000名を越える人々で埋め尽くされました。
厳粛で華やかな祝賀会は、主催者を代表して土橋靖子日本書芸院理事長の開会の辞で始まり、伊吹文明元衆議院議長、塩谷立書道国会議員連盟会長、盛山正仁文部科学大臣、宮田亮平日展理事長、齋藤元彦兵庫県知事、久元喜造神戸市長、鳥谷弘幸皇居三の丸尚蔵館館長と、来賓より8名の方の祝辞が続きました。
先生の文化勲章受章は、書の分野では8人目となる大きな慶事であること。至簡の美や調和しないものを調和させる先生の独創的な作品群。長きにわたって日本の書壇を牽引されながら、書道のユネスコ登録推進の活動でも陣頭指揮を執られてきたことなど、これまでの業績の数々を称え、先生の人となりが語られました。
黒田賢一日展副理事長から記念品が贈呈され、続いてお祝いの花束が贈られた後、井茂圭洞先生が謝辞を述べられました。
「昨年11月3日に皇居にて天皇陛下より勲章を親授され、思いのほか重いことに驚き、この重みはここに至るまでにご支援下さった方々の気持ちの重みであると感じています。」
「仮名の成立はわび・寂・みやびといった日本民族の魂の創造ではないのか、神戸の桜ヶ丘古墳から発掘された国宝銅鐸に見られるサギの絵の芳醇な描線に、その起源を感じる。」
「兵庫高校で恩師深山龍洞先生と出会い、熱のこもった指導を受け、先生から同じ道を進んでくれないかとの言葉を頂き、実に有難く、今日まで書の道を歩んで来た。」
「書道ユネスコ無形文化遺産登録では、全国44名の知事、国立大学の多くの学長、都道府県団体からは約1万の方々の推薦状と書道ユネスコ推薦状を提出、書道国会議員連盟をはじめとする皆様の力添えで、書道ユネスコ無形文化遺産への提案決定となった。」
先生の語られる一言一言が出席者の心に響いてきます。
「書の線は心臓の鼓動の軌跡であり、呼吸の形象化との持論に至り、その妙は瞬時に毛筆が生み出す弾力の変化から生まれるものと考えるように至った。」
「書の古典の中から未発見の美を見出せないかと不可能にも近いことを考えておりますが、与えられた時間で努力し続けたいと思っている。」など、これからの御自身の書作についての意気込みも語られました。更に青山杉雨先生をはじめとする諸先生から、一東書道会の方々、御両親や御家族への謝意を述べられました。
「自分の作品となると平常心がなくなるが、家内はいつも冷静な目で判断してくれた。文章の校正をはじめとし、妻聆子は私のことを最優先とした日々の生活であった。」
身内のことで御遠慮もあったからか、今までの祝賀会ではあまり奥様のことには触れられなかった井茂先生ですが、この日は最後に長いこと御苦労を共にされた奥様のことを話されました。壇上で感極まれた御様子の奥様の姿に我々の心も動かされ、井茂圭洞先生と奥様にこの日一番の大きな拍手が送られました。
河村建夫元内閣官房長官の乾杯で祝賀に入り、熱気と慶びに満ちた祝賀会は真神巍堂日本書芸院顧問の閉会の辞で終了しました。
式終了の後、会場の外では井茂先生と奥様が揃って、出席者の一人一人に御礼の言葉をかけて下さいました。ポートピアホテルには先生の「母」という作品が飾られています。
「十億の人に十億の母あらむもわが母にまさる母ありなむや」
多くの人々が作品の前に立ち止まり見入っておりました。感動の祝賀会は、先生の思いのこめられた御作と共に出席者の心に刻まれたことでしょう。

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